メッセージ

2006年4月27日

今年の冬は寒さが厳しかった。北国では雪の被害も大きかったようだ。
しかし桜は四月を待たずして満開。
春の散歩道には柳や花見月の若芽が輝きながら風に揺れている。
そんな春を感じるとなんだか嬉しくて心が軽くなる。
これを読んでくださっている皆さんはどんな春を迎えているのだろうか?
前回のコメントからまたずいぶんの時間が流れてしまい申し訳ないと思っている。
あれからいろいろな事がありあっという間の半年間、少しお話したいと思う。

去年の夏の忙しさの後、石垣島カビラで海を見ながら思った事。
抱えていった本が司馬遼太郎と柳田国男という事もあって「海の道」について考え、 それまでに興味のあった空海や密教それから派生して香道の事へ繋がり、頭の中は天平時代に時空移動していた。
日本文化はご存知の通り海を越えて大陸からやってきた。文化伝来の道としてはシルクロードが有名だがもうひとつ東シナ海の島々を経由して南方から流れてくる海のルートがあった。米も基督教も武器もこのルートで流れてきた事は有名な事実だ。
西の国で大航海時代と言われていた時アジアは豊かな夢の国と思われ、アジアへの海のルートを模索していた。バスコダガマがケープタウンを経由してアジアへの道を発見すると日本への海の道も開かれた。こんな事を考えながら東シナ海を眺めていると遠くからやってくる波が違った美しさに見えてきた。そんな波をデッサンしてきて出来たのが『東シナ海』のシリーズ。

お香をたきながら思った事。
暮らしの中で自分の好きな香りに包まれると人生が膨らむような気がする。
嗅覚は人間の感覚の中でとても儚く消えやすいものだけれども脳に残る記憶としては一番強いものらしい。それ故香りによって呼び起こされる昔の記憶というものがある。
紅茶の香りで母を思い出したり、橘の花の香りで昔の彼女を思い出す話は有名である。
沈香などの香木を楽しんでいると遠い昔その樹木が生きていた頃の空気を今再び感じているようなそんな不思議な感覚に陥る事がある。そんな香りの化石ともいえるお香のイメージを絵にしたいと思い描き出したのが香りシリーズ。

このように書いていると順調に制作活動が続いているようだが、それがそうでもない。
実は今とんでもない状態にいるのである。去年の暮れに思いついて最近始めた事なのだが20年間暮らした家を壊して立て替えている。先週仮の住まいに引越しが終了しアトリエも別のところに移って今はそこで仕事をしている。初めての経験ではないのだがこんなに引越しが大変な事だとは知らなかった。20年間僕の引力に引き寄せられた物たち。たまりにたまって半端でない量だ。それを捨てる作業がまた大変。
その時々の記憶の欠片、そう簡単には捨てられません。たまった本もダンボールに20箱近く。もう開く事はないだろうと思われるものを捨ててもずいぶん在るものだ。こんな作業はゆっくりと時間をかけてかみ締めながらすれば少しは楽しい作業になるのだろうけれどそうできないのが僕の悲しいところ。でも今はだいぶ片付いて仕事も少しずつ始めだしました。東シナ海と香りのシリーズ、新アトリエでどの様な展開になるのか僕も良くわからないのですが楽しみにしていてください。
そんなわけで近々には大きな展覧会は予定していませんが6月に群馬県・前橋のセントポールギャラリー<029−982−0961>で個展があります。上記の作品の一部も発表していますのでお近くの方はご覧ください。荒れた文章で申し訳ないのですが近況報告まで。皆さんも健康に気をつけてよい季節をお楽しみください。

                笠井 正博

< 前へ  バックナンバー  次へ >
最新号へ戻る