メッセージ

2009年2月9日

新しい年も気が付けば1ヶ月が過ぎ夜道には梅が香り櫻の枝には蕾が準備を始めています。
何千年周期の彗星の接近、浅間山の噴火、日食など不吉な現象があり世の中の流れは相変わらず先行きが怪しい状態で古代マヤ暦の2012年終末説は真実味を帯びてきましたが、僕は相変わらず香りのシリーズを描きながら淡々と暮らしております。

さて今日は昨年末にスペイン南西部を旅行してきた話を少ししたいと思います。
昨年末巴里経由でバルセロナに入りました。
30年前パリに住んでいた頃一度訪れているのですが、街も僕も随分変わってしまい新鮮な気持ちで歩く事が出来ました。カタルニア美術館でロマネスク美術のコレクションをゆっくり眺め素朴なキリスト像や壁画の美しさに酔いました。10世紀頃のピレネー地方には洞窟を利用した素朴な教会が点在しその内側には美しい壁画が描かれていました。
そんな洞窟壁画も美術館内に再現されていて当時の人々の素朴な信仰心を感じ穏やかな気持ちになりました。美術館のある山を散歩しながら海側へ向かい小さなロープウェイに乗ってバルセロネータの海岸へ降り海際のレストランでイカ墨のパエーリャとワインでカタルニアの味も楽しみました。
ガウディーサグラダファミリアもだいぶ仕事が進んでいましたがまだまだ完成には至っていないようです。知らない街に行くと美術館の次に必ず行くのが市場。この街にも古くから立派なサン・ジョセップ市場があります。野菜、肉、魚貝、新鮮で豊富な食材は市場内のカウンターレストランで好きな調理法で食べる事も出来ます。思わずソーセージや牡蠣などを買いたくなりましたが胡桃とドライフルーツそれに大蒜を少しだけ買いました。
市場を出て旧市街のゴシック地区を歩いていると道端に句読点を打つようにギター弾きが点在していてカタルニア気分を盛り上げてくれます。食事はバールでもレストランでもワイン・料理ともに満足でスペイン旅行の始まりは素晴らしいものでした。

バルセロナに二泊したあと妻の希望でスペイン国鉄RENFが誇るホテル夜行列車でグラナダへ。一夜明けてアンダルシアに入ると遠くに見えるシェラネバダ山脈は雪を被っていました。嘗てこの街は北アフリカのイスラムの民が都を築いた所でアルハンブラ宮殿はあまりにも有名です。宮殿内は美しいアラブ文様で埋め尽くされ中にいるとアラベスク酔いを起こしそうです。その宮殿を囲むように街が広がり元気があれば全て徒歩で巡れる街です。いまだにアラブ人街も栄えていてクスクスなどの北アフリカ料理も楽しめました。グラナダと言う名の通り町は赤茶けた土に囲まれてその中にはキラキラと輝くイスラム美術の実が詰まった柘榴の町でした。この街からマドリッドまでも鉄道で移動しました。
夕方の便だったのでカフェでサンドウィッチを買って乗り込むと飛行機と同じような食事が出てきてびっくり。こちらの鉄道の一等以上の座席には食事が付いているのですね。
聞き覚えのある駅をいくつか通過しながら4時間ほどでマドリッドへ入りました。

さすがに首都、他の町とは大きさが違います。トレド門の近くに宿を取り主に地下鉄で移動しました。トレド美術館ではレンブラントの大きな企画展が見ることが出来これは収穫でした。もちろんゴヤやベラスケスなども十分楽しんできました。レストランではキャセロールドゥリー(鍋ご飯)というオマール海老とご飯をサフラン風味で炊き込んだおじや風のとても美味しい料理をいただきました。日曜の朝にはホテルから近いラティーノと言う街で開かれる青空市にも行きました。売り子も物品も多種多様でこの空気はきっと中世ぐらいから変わっていないような気がしました。治安が悪いと評判のスペインでしたが街中も田舎もよい気分のまま二週間が過ごせました。その後巴里に寄って友人と会ったり画材を買ったりして戻ってきました。

現在世界の中で大きな問題を抱えているイスラム教ですが、嘗てこれを信じる民族はスペイン全土を始め大きな領土を有し医学、科学、天文学などのレベルは他の追従を許さぬものでした。その繁栄の痕跡を見て回る今回の旅でしたがアルハンブラに代表される徹底した繰り返しのモザイク、アラベスク文様の素晴らしさには圧倒されました。そして今僕がテーマにしている香りの素でもある香料、スパイスもイスラムの文化なしでは語れません。

今回の経験がどの様に作品に反映してくるかは分かりませんが良い刺激になって作品の隠し味になってくれると思います。今後の展覧会は3月下旬から4月初旬にかけて山形市のぎゃるり葦(023-622-1234)、7月13日-25日まで東京銀座養清堂画廊(03-3571-1312)で予定しています。お近くの方は是非見に来てください。

世の中景気が悪いと嘆く人が多いようですが季節はいつも通り動いて春はもうそこまでやってきています。気持ちを爽やかに持って人生を楽しみましょう。

                            笠井正博

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