メッセージ

2019年3月5日

歳を重ねると様々な雑事が増え人生の時間を奪われます。
このホームページのコメントも書き換えずに半年以上の時が流れてしまいました。
その時々に考える事を何度か書き始めたのですがなかなかまとまらず今日になりました。
今パソコンのキーボードを叩きながら思ったことから書き出すことにします。

このコンピューター、元々計算機で全てを数字に置き換えて動いています。
そして記憶することが得意です。
その技量を駆使し昨今では将棋やチェスで人間を負かしたり試験問題を解いたりしていますが
これも記憶の蓄積と情報の数値化で成り立っています。
そもそも人の仕事を助けるために開発された機械なのに電脳依拠が進んだ昨今
人間の人工知能化が起きているような気がします。
全てをデータや確率で考え自分で感じ考えることが少なくなっているようです。
しかし生きているということはデータも経験もない外界との接触に反応していくことです。
コンピューターにこれは出来ません。

人は母の胎内という自分だけの世界からこの世の中にでて
外の世界に触れ様々な事を感じて成長し
外界から受ける刺激によって次第に自分が形成されていきます。
始めは両親や兄弟、成長とともに先生、友人、それに加え
自然現象、音楽、文学などの芸術作品などから刺激を受け
自分が出来上がってきます。
勿論自分と言う小さな種のような物はあると思いますが
それを形作るのは取り巻く環境や他者です。
人は一人では自分であることを必要としません。
我々太陽系の属する銀河でさえ他の銀河との関係で成り立っていて
40億年先にはこの銀河とアンドロメダ銀河が衝突結合するといわれています。

昨今の地球を眺めていると利己的な考え方が主流になり何でも数値化し損得で物を考え
国籍、人種、宗教などを理由に差別や排斥が各地で起こっています。
異質なものを排除し壁を作り自分たちだけが快適な暮らしをしたい
こんな考えが行きつくところは歴史を見れば明らかです。
いち早く今世紀初めにヨーロッパは経済共同体ユーロを作り新しい国の形を作りました。
理想は素晴らしかったのですがギリシャの経済危機、移民問題、スペイン内乱、
英国の離脱、リーダー的存在のメルケル、マクロンの不人気など抱える問題は少なくありません。

それに加えヨーロッパという一つの大きな単位で同一化をしようとすると
以前あった国よりももっと小さな単位で固まろうとする動きが各地で起きてきました。

そんなヨーロッパの空気を吸いに昨年秋パリに行ってきました。
かの地でも「もうユーロはやめたほうが良い」という声をよく聞きました。
ちょうどジレジョンヌのデモが始まり燃料税値上げ法案が廃止に追い込まれた時です。
この運動はそれだけにとどまらずマクロン大統領への攻撃に発展し今尚続いています。
さすがフランス革命の国だと感心しますが我が国の民のおとなしさにはがっかりします。
自分たちの都合の良いように法案を数の力で次々と成立させ
公的文書の書き換え・虚偽は当たり前
世界調和を崩しまくっている米国大統領に平和賞を推薦するという
ノーベル賞級愚行の首相が今日もテレビジョンで笑っているのは許せません。
沖縄の県民投票の結果にしても政府は何も感じていないようです。
国民の声を無視しながら米国の意のままに動く国にロシアの北方領土返還もないでしょう。
こんな政府に物を言えない、行動で示せない自分を不甲斐無いと思いながら
作品で何か示せないかと考えますが簡単ではありません。

愚行を続ける人類を乗せた地球から41年前に旅立ったボイジャー2号が太陽圏を脱出し
星間空間に到達しています。1978年に打ち上げられ木星、土星,天王星、
海王星などを訪問した後現在はオールトの雲へと向かっています。
今なお地球との送信が可能な状態で
太陽の影響が届く果てからの新情報を届けてくれるかもしれません。
このボイジャー2号には「地球の音」というタイトルのレコードが再生用の針と共に
乗せられています。確かグレングールドのバッハや日本の尺八の音も入っているはずです。
当時のジミー・カーター大統領の「我々はいつか銀河文明の一員となることを期待する」という
メッセージも添えられているようです。今の米国からは考えられないロマンチックな仕事です。

人は愚かですが一人では生きられないことを知っています。
それ故遠くの星に友人を探しにボイジャーを飛ばしたりもするのです。
もし宇宙の果てでバッハが流れたらなどと考えると楽しくなります。
スケールは違いますが僕の仕事もこれと似ていて
まだ見ぬ友人がどこかで作品を目にして
こんなことを考えている人がいるのだと
微笑んでくれたら嬉しいなと思いながら描いています。
今年も個展でそんな作品を見ていただきたいと思います。
宜しくお願いいたします。

                            笠井正博

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